概要
焼入れによってマルテンサイト組織が形成されると、鋼の硬さや耐摩耗性を大きく向上させることができます。一方、焼入れ直後の部品には高い残留応力、靭性の低下、残留オーステナイトが存在する場合があり、割れや変形のリスクも高まります。そのため、多くの焼入れ鋼部品では、焼戻しは任意の補正工程ではなく、最終特性を得るための熱処理工程の一部です。 焼戻しでは、焼入れした鋼を変態点より低い温度まで再加熱し、所定時間保持した後、規定条件で冷却します。目的は単に硬さを下げることではありません。適切な焼戻しにより、残留応力を低減し、靭性を調整し、組織を安定化させ、図面または材料規格が要求する機械的性質の範囲に整えます。 すべての鋼に共通する焼戻し温度はありません。SKD11、SKD61、S45C、SCM440では、同じ温度でも得られる結果が異なります。鋼種、素材の初期状態、オーステナイト化温度、焼入れ方法、断面寸法、焼戻し回数、使用条件を一体として検討する必要があります。
